建設業許可は、会社でなければ取れないものではありません。個人で取るときに見られる要件と、将来の法人成りを見すえた取り方を、大阪府の手引きに沿って整理します。
個人事業主でも建設業許可は取れます
建設業法は、許可を受ける人を法人に限っていません。個人事業主も、一人親方も、要件を満たせば建設業許可を受けられます。大阪府内にだけ営業所がある場合は、大阪府知事の許可です。
許可が必要になるのは、税込み500万円以上の工事を請け負うときです(建築一式工事は1件1,500万円以上。ただし延べ面積150㎡未満の木造住宅の工事は除く)。許可が要らない工事の範囲は「軽微な工事」と500万円の線引きで説明しています。
個人の場合は、事業主本人が経営の責任者と技術の責任者を兼ねることが多く、要件の確認は「本人の経歴と書類」が中心になります。
個人で許可を取るための要件
要件そのものは法人と同じです。個人の場合にどう当てはめるかを表にまとめます。
| 要件 | 個人の場合のポイント |
|---|---|
| 常勤役員等(経営業務の管理責任者) | 事業主本人、または支配人のうち1人が、建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を持っていることなど。個人事業主として5年以上建設業を営んできた経験が使えます |
| 営業所技術者等 | 国家資格、または実務経験10年、指定学科卒業+実務経験(大学等3年・高校5年)など。本人が要件を満たせば、同じ営業所で常勤役員等と兼ねられます |
| 財産的基礎(一般建設業) | 直前の決算で自己資本500万円以上、または申請日前4週間以内の残高日の預金残高証明で500万円以上など |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金保険・雇用保険に加入していること(適用除外の場合を除く)。次の章で説明します |
| 欠格要件 | 破産して復権を得ていない、一定の刑を受けて5年を経過していない、などに当たらないこと |
個人の「自己資本」は、貸借対照表の期首資本金・事業主借勘定・事業主利益を足し、事業主貸勘定を引いた額(利益留保性の引当金・準備金があれば加える)で計算します(大阪府の手引き)。青色申告の貸借対照表がある方は、数字を確かめやすくなります。自己資本が500万円に届かない場合は、預金残高証明で500万円以上を示す方法があります。
それぞれの要件の詳しい内容は建設業許可の要件、常勤役員等の経験については常勤役員等(経営業務の管理責任者)の解説、資格がない場合の技術者要件は資格がなくても建設業許可は取れるかをご覧ください。
一人親方と社会保険
令和2年10月1日から、社会保険等(健康保険・厚生年金保険・雇用保険)への加入が許可の要件になりました。ただし、加入の義務がない(適用除外の)場合は、加入していなくても要件を満たします。
大阪府の手引きには、次のように書かれています。
- 健康保険・厚生年金保険:法人、または家族従業員を除く従業員が5人以上の個人事業主は、原則として適用事業所になる
- 雇用保険:労働者を1人でも雇っていれば、法人・個人を問わず適用事業所になる。事業主本人と同居の親族だけで営んでいる場合は、原則として適用除外
従業員を雇っていない一人親方であれば、多くの場合、健康保険・厚生年金保険の適用事業所にも雇用保険の適用事業所にも当たりません。一方、従業員を雇っているのに雇用保険に入っていない場合は、加入の手続きが先に必要です。
※適用事業所に当たるかどうかの判断は、年金事務所(健康保険・厚生年金保険)、ハローワーク(雇用保険)に確認するよう大阪府の手引きに書かれています。加入の手続きそのものは社会保険労務士の仕事です。
個人の経験はどう証明するか
個人事業主として建設業を営んできた経験は、大阪府の手引きでは次の2つがそろった期間で確認されます。
- 営業の実態:所得税の確定申告書の第一表(令和7年以降の申告分は税務署の受付印が不要。電子申告は受信通知)
- 営業の実績:工事内容・工事期間・請負金額が確認できる書類(工事の契約書・注文書・請求書など)
実績は、毎年分の代表的な工事を確認します。ある年の工事と翌年の工事の間が1年以上あくと、その間の工事の実績も求められます。確定申告書や注文書を保管していない年があると、その期間は経験として数えにくくなります。「何年分そろうか」を最初に確認するのが、個人の申請の第一歩です。
営業所技術者等の実務経験も同じ書類が土台です
本人が実務経験で営業所技術者等になる場合も、実務経験証明書(様式第9号)に具体的な工事を書き、契約書や注文書で確認されます。経営経験と実務経験の両方を、同じ工事の書類で説明することが多くなります。
許可を取った後、個人ならではの手続き
- 決算変更届:毎事業年度の終了後4か月以内に届け出ます。個人は毎年4月30日までです。詳しくは決算変更届のページをご覧ください
- 本人が常勤役員等・営業所技術者等を兼ねている場合:本人が要件を欠くと、代わりの人がいない限り許可を維持できません。常勤役員等や営業所技術者等の変更は14日以内の届出が必要で、1日でも空白があれば許可は失効します
- 事業主が亡くなった場合:相続人が事業を引き継ぐには、死亡後30日以内に相続の認可を申請する制度があります(建設業法第17条の3)
法人成りを考えている場合:先に法人か、個人で取って承継か
「いずれは会社にしたい」という方は、許可をどちらの名義で取るかを先に考えておくと、手間と費用の無駄を減らせます。
個人の許可は、法人成りしても会社にそのまま引き継がれないのが原則です。会社で新たに新規申請をし、個人の許可は廃業届を出すことになります。ただし、令和2年10月1日の建設業法改正で、事業譲渡などについて事前に認可を受ければ、許可を引き継げる制度ができました(建設業法第17条の2)。大阪府では、個人から法人への事業譲渡もこの認可の対象として案内されています。
| 進め方 | 向いている場合 | 注意点 |
|---|---|---|
| 先に法人を作り、法人で新規申請 | 法人成りの時期が近い。今すぐ500万円以上の工事を受ける予定がない | 法人の設立(登記)を先に済ませる必要がある。個人事業主としての経営経験は、法人の常勤役員等の経験として使える |
| 個人で許可を取り、法人成りのときに認可で承継 | すぐに許可が必要だが、法人成りは数年先 | 承継日より前に認可を受ける必要がある。法人側も許可要件を満たすことが必要。許可業種は全部を引き継ぐ |
| 個人で許可を取り、法人成りのときに法人で新規申請 | 認可の要件に合わない事情がある | 法人の許可が下りるまでの間、法人名義で500万円以上の工事を請け負えない空白が生じうる。手数料も新規分(9万円)が再びかかる |
承継の認可を使う場合の段取り(大阪府)
- 事業譲渡の効力発生日より前に認可を受ける必要があります。あとからさかのぼって認可を受けることはできません
- 大阪府の「建設業認可申請の手引き」では、事前相談を遅くとも効力発生日の2か月前を目安に、認可申請は効力発生日の30日前まで(45日前までを推奨)とされています
- 大阪府の認可申請には手数料がかかりません(大阪府の手引き)。標準処理期間は土日祝を含めて30日です
- 認可を受けると、承継日の翌日から新たに5年の有効期間になります
- 大阪府の電子申請(JCIP)は、承継の認可申請には対応していません。書面での申請です
どちらが合うかは、法人成りの時期、今の工事の規模、経審(経営事項審査)を受けるかどうかなどで変わります。法人成りと承継の詳しい手続きは法人成り・事業承継のページをご覧ください。
※会社の設立登記は司法書士、法人成りに伴う税務は税理士の仕事です。ARIAグループには司法書士法人ARIAグループがありますが、別の事務所・別のご契約・別の費用となります。専門家はご自由にお選びいただけます。
ARIA行政書士事務所にご相談いただく場合
ARIA行政書士事務所(大阪市都島区)では、個人事業主・一人親方の方の大阪府知事許可の新規申請と、法人成りに伴う許可の承継(事業譲渡の認可申請)をお手伝いしています。
最初に、確定申告書と工事の注文書・契約書が何年分そろうかを一緒に確認し、個人で取るか、法人で取るか、承継を使うかを、時期と費用の両面からご説明します。許可を取った後の決算変更届や更新も続けてお手伝いできます。
手続きの流れは新規許可のページ、費用は料金のページをご覧ください。ご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。
最終確認日:2026年9月29日(法令・制度はこの日時点の内容です)
建設業許可のご相談をお受けしています
初回のご相談は無料です。「うちは許可が取れるのか」「決算変更届が何年分か出ていない」といった段階からご相談ください。
お手元の書類と状況をうかがい、必要な手続きと費用をお見積りのうえでご案内します。
